その歴史は紀元前3000年頃の古代エジプトにまで遡り、装飾品や護符として使用されていました。ツタンカーメン王の墓から発見された装飾品にも、アメシストが用いられています。

中世ヨーロッパでは、司教や高位聖職者の装飾品として用いられ、「司教の石」とも呼ばれていました。

かつては紫色の染料が非常に貴重であったため、美しいアメシストはファッションの主役として、ダイヤモンド、ルビー、エメラルド、サファイアといった最高級の宝石に匹敵する価値と希少性を持っていました。

世界各国のロイヤルファミリーが、アメシストのジュエリーコレクションを所有しています。

近代になり、ブラジルで大規模な鉱脈が発見されると比較的入手しやすい宝石となりましたが、その美しさは変わらず、今なお多くの人々に愛されています。

この名前は、ギリシャ神話に登場する酒神ディオニュソス（ローマ神話ではバッカス）にまつわる伝説に由来します。

月の女神アルテミスに仕える美しい少女アメジストが、ディオニュソスの怒りに触れ、水晶に変えられてしまいます。

ディオニュソスは自らの行いを後悔し、水晶にぶどう酒を注いだところ、水晶が美しい紫色のアメジストに変わったと言われています。

この伝説から、アメジストには悪酔いを防ぐ力があると信じられ、古代ローマではアメジストの杯で酒を飲む習慣がありました。

また、19世紀前半に制作されたケント・アメシストは、現在イギリス王室が所有する最古の宝石のひとつとして知られています。

ケント・アメシストは、ティアラ、ネックレス、イヤリング、ブローチのセット（デミ・パリュール）で、エリザベス女王は、フルセットで身に着けることは稀でしたが、公務の際にブローチを頻繁に着用されました。

かつては、日本でも、栃木県の万珠鉱山や石川県の尾小屋鉱山などで、良質なアメジストが産出されていました。（現在はほとんどが閉山しており、枯渇しています。）

日本のアメジストの特徴は、海外産のアメジストとは異なる、淡いピンクや藤色に近い優しい色合いを持つことです。

現在では非常に希少価値が高く、国産のアメジストは、鉱物愛好家やコレクターの間で珍重されています。