紀元前30年にローマ帝国がエジプトを植民地化すると、エジプトで産出されたエメラルドはローマを通じてヨーロッパへと運ばれました。皇帝ネロが、目を保護するためとも言われるエメラルドのレンズを使用していたという逸話も残っています。

中世ヨーロッパでは、エメラルドは解毒作用や目の病気の治療に効果があると信じられ、粉末にして薬として用いられることもありました。

16世紀にスペイン人が南米大陸を発見すると、コロンビア産の高品質なエメラルドがヨーロッパに紹介されました。コロンビアは現在でも、世界最大のエメラルド産出国としてその名を知られています。

この言葉が、ギリシャ語の「スマラグドス」、ラテン語の「スマラグダス」や「スマラルダス」へと変化し、さらに古フランス語の「エスメラルド」へと変化する中で、時代とともに発音が変わり、現在の「エメラルド」となりました。

その美しさに魅せられたクレオパトラは、装飾品として身に着けるだけでなく、細かく砕いてアイシャドウとしても使用していたという逸話も残っています。

彼女は自身の名を冠した「クレオパトラ鉱山」というエメラルド鉱山を所有していたと言われ、紀元前20世紀から紀元前13世紀頃までの約700年以上にわたって採掘が行われていました。

その後、鉱脈が枯渇して放棄され、忘れ去られていましたが、1818年にフランス人探検家フレデリック・カイヨーによって再発見されるまで、その実在は長らく謎に包まれていました。

現在までに、鉱山再開に向けた調査が何度か試みられていますが、成功には至っていません。しかし、詳細な現地調査によって複数の鉱山の跡が発見されており、かつて大規模な採掘が行われていたことが明らかになっています。

現在、「クレオパトラ鉱山」は観光地として一般公開されていませんが、鉱物採集家などが訪れる場所となっています。